神奈川県議会議員 鈴木ひでし 鶴見区選出 公明党

「さがみロボット産業特区」の次なる展開について

(1)災害対応ロボット等の先行導入について

「さがみロボット産業特区」の取組の進展によって、生活支援ロボットの実用化と普及が進んできているが、山岳救助をはじめ災害・事故に対応するロボットやインフラ点検用ロボットを身近に感じてもらう機会を設けることは容易ではない。
 そこで提案したいのが、県を中心とした公的団体による、無人飛行体、いわゆるドローンをはじめとするインフラ点検用ロボットなど、災害対応ロボット等の積極的な導入・活用と、実際の利用を通じて得られた効果や課題の発信である。災害対応ロボット等は介護など他の生活支援ロボットと比べ、市場化の見通しの立ちづらい分野であり、県などが購入または借り受け、実際に使用するとともに、費用対効果を示すなど導入を提案していくことが大切である。

そこで、災害対応ロボット等の普及を進めるため、県などが率先して導入・活用するとともに、一定の効果が期待される団体等に対しては、県から導入に向けた具体的な提案を行っていくべきと考えるが、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

災害対応ロボットやインフラ点検用ロボットは、開発や生産に多額の費用がかかることで高額となり、ユーザーも限られるため、普及が課題となっています。
 そこで、県では、これまで、重点プロジェクトや神奈川版オープンイノベーション等により、企業の開発や実証に係る負担の軽減を図ってきました。また、九都県市防災訓練などの場を活用し、災害対応ロボットの実演を行うなど、多くの方に関心を持っていただく取組を展開してきたところです。

今後は、より強力に普及を促進するため、災害対応ロボット等のユーザーを念頭に、二つの取組を進めていくことが大切だと考えております。
 一つは、国への導入の働きかけです。先の「ロボット革命実現会議」で、私は、「使用者が限定され、高価な災害対応ロボットは、国が率先して購入すべき」であると強く訴えました。その結果、「ロボット新戦略」に、国等における率先導入が位置づけられたところです。今後、県から「さがみ」発の優れたロボットを積極的に国にアピールし、活用を促していきます。

もう一つは、県などの業務での活用と評価・課題の発信です。現在、県では、元県立新磯高校のプレ実証フィールドを監視するロボットの導入準備を進めています。また、企業庁は、ダム等の点検に役立つ小型飛行ロボットの導入を予定しています。

さらに、企業からロボットを無償提供してもらい、県や市町で実際に使用し、評価する仕組みも検討しています。県などが業務の中で使用し、高く評価したものは、県から関係団体等に推奨し、導入を促進してまいりたいと思います。
 こうした取組の展開により、神奈川が災害対応ロボット等の普及を牽引し、「ロボット革命を実践する県」として、全国にその存在をアピールしていけるものと考えております。

(2) ロボット教育や普及指導員制度の導入について

様々な生活支援ロボットが開発・実用化され、普及・浸透していく中にあって、それを使用する側が誤った目的、使い方をすればロボットは危険な存在にさえなり得るのであり、今後、ユーザーである我々がロボットとどう向き合っていくかが重要となってくる。

ロボットを正しく使い、真のパートナーとして接していくため、学校等での指導・教育や、普及に係る資格制度の創設など工夫を凝らし、ぜひ、他に先駆けて、取組を進めていただきたい。

そこで、生活支援ロボットの普及を進める上では、県民をはじめユーザーが正しくマナーに沿った使い方をしていくことが重要であり、そのためには、全国でも例のない普及指導員の資格制度を創設するなど、教育・啓発にも力を注ぐべきと考えるが、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

「さがみロボット産業特区」では、生活支援ロボットの実用化と普及により、安全・安心な県民生活の実現を目指しています。
 例えば、ロボットが24時間365日、利用者に寄り添うことで、微妙な体調の変化をキャッチしたり、家や街中で降りかかる危険から守り、快適な生活をサポートすることが可能となります。

しかし、こうした生活支援ロボットが普及・浸透すればするほど、それらを「正しく」「誰にも迷惑をかけず」使いこなすことが重要となってきます。
 昨年、私は特区内の3大学で行われた公開講座に参加しました。「未来のロボットハウス」がテーマでしたが、「要らないロボットは何か」と問われ、即座に私は「悪意のあるロボット」と答えました。そして、私たち、ロボットを使う側の意識、「こころ」が最も大切だと訴え、多くの参加者の賛同を得ました。

こうした「こころ」は、ロボットを正しく理解するところから生まれます。その意味で、いわゆるロボットリテラシーが重要であり、そうした私の主張を受け、今般の「ロボット新戦略」にも位置付けがされたところです。

県においては、すでに保健福祉大学の教授により、「介護ロボット講義」などが行われているところであり、今後、さらに特区のイベントやロボット体験施設、公開講座等の「場」を活かし、ロボットを正しく使ってもらうための「こころ」の啓発を進めていく考えです。

併せて、特区内の市町と連携し、小中学校で、ロボットとの接し方など、ロボットリテラシーを養う機会の創出を目指していきます。さらに、議員からご提案いただいた、ロボットリテラシーなどの普及を担う「普及指導員制度」の導入も、生活支援ロボットが正しく使われる社会をつくる上で大変有効な手法です。今後は、県内で活躍するNPO等と連携するなど、神奈川らしい方法での実現に向け、検討を進めていきたいと思います。

ロボットの「こころ」は、私たちの「こころ」です。県では、「さがみロボット産業特区」に「ロボットの正しい使い方」を浸透・定着させるため、ロボットリテラシーの醸成に向け、引き続き全力で取り組んでいくべきだと考えています。

(3) 県民と生活支援ロボットとの共生条例について

今後、ロボットハウス・ロボットタウンを普及させていくには、より多くの県民に、生活支援ロボットの良さを理解し、生活や仕事の中に積極的に取り込んでもらうことが大切である。

そのためには、県や市町が、自ら進んでロボットを導入・活用・評価し、県民や施設等による導入のリスクの軽減を図るとともに、県民等もロボットを生活や社会の一部、すなわち共生するパートナーとして向き合っていく必要がある。県民と生活支援ロボットが共生する健全な社会の実現には、県を中心に市町村や企業、県民が同じビジョンを共有し、享受すべき利益と互いの責務を明確化した上で、自発的に行動していくことが不可欠であり、それらを規定した、全国のモデルともなる条例の制定を目指していただきたい。

そこで、「さがみロボット産業特区」における次なる展開として、将来のロボットハウス・ロボットタウンの実現・定着を見据え、県民と生活支援ロボットとの共生に資する条例を制定すべきと考えるが、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

「さがみロボット産業特区」で実用化を目指す生活支援ロボットは、近い将来、日常生活に溶け込み、欠くことのできない存在となります。そして、家も車も街もがロボットとなり、私たちと共生するパートナーとして、人々の「いのち」を守り続けていきます。

私は、そうした近未来の姿をイメージしながら、「さがみロボット産業特区」の旗を振り続けてきました。今、かなりの手応えを感じているところであり、理想の姿をさらに力強くたぐり寄せるためには、今後、生活支援ロボットの実用化と利活用を更に強力に推し進めていく必要があると考えています。

こうした中、生活支援ロボットが県民一人ひとりの良きパートナーとなる共生社会の実現に向け、県や市町村、企業、県民の果たす責務を明示し、自発的な行動を促す条例の制定について、ご提案いただきました。

県民とロボットが共生する社会をつくるためには、ロボットを日頃から 積極的に活用しようとする意識を高めることと、ロボットの普及を阻害する様々な課題を解決していくことが重要です。 条例の制定は、 そうした点に対応す ることができる有効な選択肢の一つと考えます。

なお、 ロボットの普及を阻害する課題としては、 先ほどの飛行ロボットにおける、上空利用等の基準の未整備問題や、見守り等におけるプライバシー問題などがあります。それらは、国も意識しており、今後、新たな法の整備など、「ロボット新戦略」に基づく国の動向を見極めていく必要があると考えております。

今後、「ロボットとの共生社会」の実現をテーマに、県や市町村、企業、県民等がそれぞれどう取り組むべきか、県民総ぐるみで活発な議論を行なっていきます。そうした議論の中で、どのような条例がよいのか、どのように活用することができるか、研究を進めてまいりたいと思います。

超高齢社会における健康や孤独への不安を和らげ、 介護と仕事の両立を可能にするのは、日々、県民を見守り支える「さがみ」発のロボットです。県民一人ひとりが健康や地域・社会とのつながりを持てるよう、これからも「さがみロボット産業特区」の取組は弛まず前進していかなければならないと考えております。

再質問

ロボットとの共生条例の答弁について、国の法律があるのは分かっているが、実質的には国の法律はない。それに対して一歩先んじて神奈川県がいくべきであると提言をさせていただいた。
 これについて、条例をつくるというのは大変に厳しいというイメージに捉えたのだが、これについて知事の決意を聞きたい。

黒岩知事答弁

まずは、ロボットとの共生に向けた条例の制定でありますが、私はそういう条例があるのは素晴らしいことだなと、評価しています。
 神奈川はまさに日本のロボット革命を引っ張っているわけです。この共生社会の姿というものを条例という形で、どんな条例が必要か研究してまいりたい。

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