神奈川県議会議員 鈴木ひでし 鶴見区選出 公明党

質問要旨

(1) 神奈川消防庁の創設について

消防組織法では、消防責任を負うのは市町村とされていることは承知しているが、消防活動が広域化せざるを得ない現状を考えると、市町村だけにその責めを負わせている現状が果たして適切なのか、疑問である。大規模災害発生時には、都道府県知事が市町村長に対し緊急消防援助隊の出動指示を行えることとなるが、消防の実務経験がある県職員は少ない。
また、市町村により、消防職員の数や装備、救急体制、専門技術などにおける「消防力の格差」が存在し、県民へのサービスにも県内格差が生じている。

そこで、近年、大規模な災害や事故の発生が続く一方で、救急出動件数の増加や高度化などの傾向がみられる中、均質で高度、かつ機動的な神奈川の消防を確立するため、「神奈川消防庁」として、県内の消防本部全体を統括する体制の構築が必要ではないかと考えるが、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

温暖化や都市化の進展などにより、近年、災害が大規模化、多様化しており、単独の市町村消防では対応できない事例が増えています。

そこで、大規模で広域的な災害に対しては、全国の消防隊が被災地に駆けつける緊急消防援助隊の制度が、阪神・淡路大震災を教訓として作られました。
他県で大規模な災害が発生した場合には、私が県内の消防本部に出動を指示又は要請し、緊急消防援助隊の神奈川県隊を被災地へ派遣します。
逆に、本県が被災した時には、私が本部長として、「消防応援活動調整本部」を設置し、他県からの応援部隊を県内市町村に派遣します。

しかしながら、こうした活動に当たっては、県内の25消防本部との連絡や調整に時間を要することが避けられないという課題があります。
もし仮に県内全体を統括する一元化された指揮命令体制があれば、より迅速で機動的に対処できると考えています。
さらに、県単位で、十分な体制や高度な資機材を整備できますので、大規模災害に対しても、有効な対応が期待できます。

一方で、市町村の消防本部は、地域に密着した消防・救急活動、事業所の立入検査や住民への防火指導、消防団との連携などの業務を担っています。
市町村域を越え消防本部の規模が大きくなると、地域と疎遠になってしまうのではないかという懸念が、強くあることも事実です。
また、県内全体を統括する消防体制を構築するためには、現行法制度の抜本的な見直しや、多額の初期投資経費など、様々な課題もあります。

そこで、まずは、県内の消防力の格差を是正し、充実強化を図るために、「県消防広域化推進計画」に基づき、消防の広域化を推進していきます。
また、緊急消防援助隊の訓練等を通じ、県と県内消防本部の、より一層の連携強化に努めます。

併せて、御提案の県内全体を統括する消防体制については、国や市町村の意見も伺いながら、幅広く検討してまいります。

質問要旨

(2) 津波避難に関するわかりやすい情報発信について

津波対策には、何よりも迅速な避難が重要であり、県民の意識を高める啓発や情報発信が大切である。県は、津波の浸水想定などの情報を県民に周知するとともに、津波避難の必要性を呼びかける標識の充実を図るべきである。津波に関する標識については、可能な限り統一性があった方がよいのではないかと考えるところである。
さらに、情報発信については、V-LOWと呼ばれる空き周波数帯を活用して、マルチメディア放送が始まるという情報がある。これはいわゆるラジオの見える化であり、この新しい放送メディアの活用研究もしていくべきである。

そこで、南海トラフ地震など、本県で懸念される津波被害から県民の命を守るため、津波に関するわかりやすい標識やV-LOWマルチメディアの活用研究を含め、津波避難に関する情報発信の充実に努めるべきだと考えるが、県はどのように取り組むのか、所見を伺いたい。

黒岩知事答弁

津波対策は、何よりも迅速な避難が大切です。私は、かねてから「5分で5階」「5分で5階」と言ってきました。
また、標識などによる情報の発信も重要です。
県はこれまで、沿岸部にある県有施設への海抜表示板の設置や、海岸への津波情報の電光表示盤の設置、オレンジフラッグの普及などを進めてきました。
また、大津波警報などの情報も提供できる道路情報板の設置を順次進めており、26年度も引き続き、沿岸部を走る国道134号線などに15基設置していきます。
しかしながら、津波の標識は、従来のものに加え、東日本大震災後、急速に設置が進んだことなどから、全国の市町村ごとに表示内容は様々です。
そこで、国は、平成24年度に、学識者、国及び自治体職員、関係団体などで構成する委員会を設置し、津波避難誘導標識の標準化の検討に着手しました。本県も自治体の代表として、この委員会に参加しています。

県は、こうした検討結果を活用し、県内沿岸市町等が参加する津波対策推進会議を通じ、誰でも理解できる、わかりやすい標識の整備を促進していきます。
また、ブイ・ロウ・マルチメディア放送についても、津波情報の発信にも有効な媒体の一つになるものと期待されています。
このシステムは、現在、総務省と民間放送メディアが連携し、放送開始に向けて検討を進めています。
本県においても、今後、庁内に研究チームを設置し、県としての活用の可能性について検討を進めてまいります。
今後とも、わかりやすい標識や、新たな手法の検討を進め、津波に対する情報発信の充実に努めてまいります。

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