神奈川県議会議員 鈴木ひでし 鶴見区選出 公明党

本当にやって来た新型インフルエンザ!

「本当にやって来た!!」という言葉がつい出てしまった。新型インフルエンザの襲来である。考えてみれば、この問題を初めて耳にしたのは一昨年夏、先輩の牧嶋市議から恒例の朝の街頭遊説を終えたあと「もし、横浜港で新型インフルエンザの患者が発生したら、県はどのような対応を取るのか?」という質問を受けた時だ。当時、新型インフルエンザなどという言葉さえ聞かない頃に、このような会話があったこと自体、特筆すべきことである。当然、私は「新型インフルエンザって何?」という質問を市議に問いかけ、その的確な答えを聞き「これは大変なことだ、いつ起きてもおかしくない」と、勉強をはじめたことが今では懐かしい。
日常生活の多忙さもあり、ノラリクラリの勉強をしていたが、昨年の春から夏にかけて県議会9月定例会の代表質問に備えて全力で視察・調査を行い、県の新型インフルエンザ対策に対する姿勢を厳しく質した。特に米軍基地及び施設について基地当局者としっかり話し合いを持ち、ある意味で新型インフルエンザに感染する環境下での任務も多い米兵に対する「水際での防御策」について県・米軍基地関係者が胸襟を開いて話し合うべきであることを訴えた。
そんな中、今年4月にメキシコで起こったH1N1型の豚インフルエンザはみるみるうちに全世界に広がり5月10日午前1時現在で29カ国4,353人(死者51人)となった。内訳は図参照

この新型インフルエンザ騒動の中で、多くの問題点が見えてきた。見えてきたというよりも前々から私自身、厚生常任委員会等で指摘してきたことが現実になったと言ってもいい。20年度中の常任委員会において何度この新型インフルエンザ問題で担当の課長に声を荒げて質問、要望をしたことか。これまで、政府も、また自治体もちろん社会も、この問題について私の目から見れば「本当にくるのか?」「出たとこ勝負」「起これば起こった地点で対処」という姿勢がありありのように見えた。
そのような観点から、いざ事態が起こってみると、

  1. 特にマスコミにいたっては、いたづらに世界で起こっている新型インフルエンザ情報を流すだけ。本来、「新型インフルエンザとは何か」をいうことを国民にいち早く伝えることが使命であるはずの機関がニュースという観点からしか報道しない姿勢に、このような緊急時におけるメディアのあり方を見直すべきであると思った次第だ。同時にWHOが感染の段階をフェーズ4からフェーズ5に引き上げた地点でも、フェーズにはA(国外発生)とB(国内発生)があり政府もまた各自治体を「行動計画」によってAとBとに分けられるわけであり、そのことを報道している機関が無かったように見える。
    同時に、国が使うフェーズという概念が分かりづらいので、県民に分かりやすい言葉でフェーズ1から6を表すように提言し、県の行動計画が書き換えられたことを付しておきたい。
  2. 発熱相談センター等についても、「症状がある人は病院にいかず、まずは発熱相談センターに電話を」という。しかし問題は先ほども述べたが「新型インフルエンザとは何か?」ということを大多数の人々は理解していないとの前提で考えるべきであるということだ。昨日、5月11日鶴見区役所を訪ねゴールデンウイークを含めた、相談内容を区より聴取したが大半が渡航暦も無い方からの「子供が熱を出ているが大丈夫か」という問い合わせであった。もし、これがH5型のような猛毒の新型インフルエンザになった場合、現在の体制で果たして持つであろうか?しかも、24時間体制の受付も無い状態で!
    かろうじて横浜市、また鶴見区においては24時間体制が出発したが・・・
  3. 発熱外来について、報道によると東京都では100人以上が発熱をおこし受診を希望しても診察を断られるケースが起こっているという。確かに、一人の新型インフルエンザ患者が発生すれば一つの病院を閉める覚悟で受け入れをしなければならなくなる。新聞等でも指摘されていたが、受け入れ病院とベッド数が圧倒的に足りない。先にも述べた今までの「出たとこ勝負」という行政の姿勢が映された姿がこの問題なのかもしれない。
  4. 5月11日付け朝日新聞が「新型インフル国内でも感染確認 基地の街“不安”」との記事が載った
    「日本国内の米軍基地や米軍施設からの感染例は報告されていないが、米軍人や家族らは米軍機等の手段で日米間を行き来できるほか、検疫法は、外国軍用艦船等は規定を一部適用外とする特例を設けているため、水際での阻止は米軍側にゆだねるしかないのが実情だ。」
    「特に懸念されているのは船舶の検疫だ。航空機については、米海軍は厚木基地と三沢基地の二つの飛行場ターミナルを乗員乗客が通過する際にインフルエンザ感染の有無を検査しているが、船舶は国際保健規則に基づく検疫明告書の提出という通常通りの対応が中心だ。明告書は一人一人が出すわけではなく、船長の責任で感染地域への寄港の有無、感染患者の疑いの有無等を記す程度。しかも外国の貨物の場合は到着する港を管轄する検疫所に提出するが、米海軍の船舶は米軍内の検疫部署に提出するため、日本側が検疫状況を把握するのは限界がある。」(抜粋)
    と述べている。昨年9月の代表質問で訴えたことが現実になった。沖縄に次ぐ基地を持つ神奈川県として基地問題を含めた新型インフルエンザ対策が早急に求められる。県議会議員として国との連携を強め対処の行動を起こしたい。

以上,縷々述べてきたが、ゴールデンウイーク明け、大阪の高校生3人と教師1人が日本人最初の新型インフルエンザに感染したと報道があった。横浜市で感染の疑いがある患者が見つかったとの報道の際には、県や区役所等に「どこの区なのか」「どういう人間なのか」等々、犯人探しの電話が引きをきらない状況であったそうだ。また、大阪の感染者についても自宅まで報道関係者が押し寄せる騒ぎにもなっているとも側聞した。
きっと幸運にも夏季に向かってこの新型インフルエンザ騒動も下火になってくると思う。しかし、この秋からは心して、この問題に取り組まなければならならない事態になると思う。ある意味でこの騒動、パンデミック期を迎えるためのOJT(On the Job Training)と決め、足りない・欠けているものを補う絶好の機会と、とらえれば騒動も勉強に変わるといえるかもしれない。

平成21年5月11日

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