神奈川県議会議員 鈴木ひでし 鶴見区選出 公明党

情報を見抜く力を養わなければ

年初から上昇を続けてきた原油先物相場が急落し、世界の穀物取引の中心地であるシカゴ市場でも、原油価格に連動して、トウモロコシや大豆の価格が下落している。折から夏休みが始まり、空前のガソリン価格の上昇が家計を直撃し、今までの夏休みとは違い安・近・短がキーワードとなり、海外旅行に出発する人や遠出をする人が少なくなっているそうである。テレビをはじめとしたマスコミも連日のようにこの状況を伝えている。

新聞によると、この急落は米議会で、原油高騰を演出する投機筋の規制する法案が協議されているとも相場下落の一因だそうだ。その法案はトレーダーに対して、より詳細な取引情報を求めるとともに、商品先物取引委員会(CFTC)の権限を強化して、価格操作などへの監視を強めることがないのである。この法案について、規制論を主導する民主党のハリー・リード上院院内総務は22日「法案が成立すれば、市場はすぐに反応し、原油価格は下がる」と自信を見せているようだ。勿論、全世界がこの原油価格の高騰で苦しんでる中、米国投資銀行ゴールドマンサックスがレポートで「1バレル200ドル」と言っていたことを考えれば、この価格急落は歓迎すべきことなのかもしれない。しかしここで考えておかなければならないことは、この原油高騰は本当に投機だけの問題なのかどうかということである。
フリーランスジャーナリスト財部誠一(たからべせいいち)氏が面白い情報を載せている。

原油高騰に「投機マネー」はどの程度の影響を与えているのだろうか。日本のマスメディアは物事を単純化することにしか興味がないようで、原油高騰も全て「投機マネー」で片付けたがる。決まって槍玉に挙げられるのがWTI 先物だ。WTI とは「ウエスト・テキサス・インターミディエイト」の略で、テキサス州で産出される原油の先物を売り買いする市場だが、その産出量は極めて少ない。米国国内の原油産出量の6%程度。
世界全体の産出量から見ればわずか1~2%程度にすぎない。だが、WTI は紛れもなく、世界の原油価格に最も大きな影響力を持つ指標銘柄である。そこで今こんな論理だけが当たり前のように語られるようになった。

「昨年夏、米国でサブプライム問題が勃発して以来、金融市場が崩壊。あり余ったマネーがWTI に流れ込み、原油を暴騰させている」

そうした現象が起こっていることは間違いない。だが、「投機マネー」が原油高騰現象にどの程度の影響を与えるかについては、冷静な判断が必要だ。実はWTI で上場しているニューヨーク・マーカンタイル取引所では、投資家別の残高を公表している。
投資家は2つに分類されている。

「Commercial(石油業者)」と「Non Commercial(投機筋)」だ。

6月3日のデータを見ると「Commercial(石油業者)」と「Non Commercial(投機筋)」の残高を比べるとほぼ2対1である。投機筋の残高は請求業者の半分しかない。
「投機マネー」が実需を押しつぶして買い上がっているかのような印象が日本では広がっているが、それは明らかに間違っている。
誤解はまだある。

「投機マネー」の中身となる多くの日本人は「投機マネー」と聞いて「ヘッジファンド」を思い浮かべている違いない。短期で売り買いを繰り返す、文字通りの投機筋だ。
だが、ニューヨーク・マーカンタイル取引所によって「Non Commercial(投機筋)」と分類される投資家はヘッジファンドだけではない。それどころか、ヘッジファンドのシェアはむしろ小さい。圧倒的な存在感を持っているのは、年金基金、投資信託、保険会社がビッグスリーだ。

さらに言えば、石油会社にしろ、投機筋にしろ、誰もが原油価格の先高を確信してるわけではない。6月3日の公表データによれば、石油会社も、投機筋も「売り」と「買い」の残高がほぼ拮抗しているのである。先物市場だから、先行き値下がりすると思えば「売り」から入ることもできるし、先高だと思えば「買い」から入る。「売り」と「買い」の残高が両者ともにほぼ半々といった状況だ。

以上、引用が長くなってしまったが、一つの情報を確認することが、いかに大切なものかを考えていただく一助となればと思い、紹介した。
私が、「後期高齢者医療制度(長寿医療制度)」のプレゼンで多くの高齢の諸先輩のところを回らせていただいた時も、この制度で初めて75歳という線引がなされたかのような思いでいる方が大勢いらっしゃった。テレビでは、来る日も来る日も「75歳以上を特別扱いしている」と映像で伝えていたことが、その原因であると思う。後期高齢者という名称についてもしかり。広辞苑の5版以降にも掲載してあり、老年学という学問では以前から使っていた言葉。
先日、同僚の県議会議員との会話の中、環境問題に話がおよび、「8割以上の人が当たり前と思っていることを、もう一度精査してみる必要があるかもね」とのやりとりがあった。情報が氾濫している現代、一見わかりやすい説明や論理が常識のようになっていく。情報見抜く力を養いたい…。

平成20年7月24日

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